船に住み、東アジア一帯で漁業をしながら移動生活をしていた漂海民は、瀬戸内海で「家船」と呼ばれていた。既に消滅したと言われている彼らの歴史は古く、古代から昭和45年頃までその生活が確認されている。漂海民が日本文化形成に与えた影響を探るリサーチを元に、瀬戸内国際芸術祭2019・女木島で展開した作品「家船」は、その後、継続作品「EBUNE」として、生命の方角「東」へ向かうというコンセプトのもと、虚実混交の航海を開始した。


しかし直後に新型コロナウイルスが流行する。海民は外部の文化・技術をもたらすだけでなく、疫病を運ぶ存在でもあった。史実との重なりに驚きながらも、ウェブサイトhttps://ebune.net/を開設し、オンライン上での物語連載と並行した航海と漂着を展開している。


2020年8月に女木島漂着の前日譚として福岡・箱崎での漂着が非公開で実施された。その後、2021年5月には、女木島、福岡のさらに前日譚として佐賀県有田町へと漂着を果たした。


今回、EBUNEは兵庫県淡路島への漂着を試みる。


古事記の冒頭において、伊弉諾尊・伊弉冉尊の二柱は、混沌とした現世を天沼矛でかき回し、矛先から滴り落ちた塩の雫が固まっておのころ島が形成されたと記されている。おのころ島で夫婦となった伊弉諾尊、伊弉冉尊は、日本列島の島を次々と生み、その中で最初に生まれた島が淡路島であるといわれている。


この物語を受け、洲本市、南あわじ市及び淡路市は、文化庁による地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語る物語を認定する事業「日本遺産」において、「『古事記』の冒頭を飾る「国生みの島・淡路」〜古代国家を支えた海人の営み〜」という物語を申請し、2016年4月に、淡路島日本遺産として認定された。「日本遺産」は東京オリンピック・パラリンピックに係る文化事業の一つであり、2015年に創設され、開催までに全国で104件の物語が文化庁により認定された。 淡路島には、伊弉諾尊が、天照大御神に国家統治を委譲した後に余生を過ごした幽宮の跡地である伊弉諾神宮​​の最古とされる神社や、伊弉諾尊、伊弉冉尊が最初に形成した山とされる先山、舟木石上神社を始めとする磐座群など、日本の起源を定めた時期から信仰される神社仏閣、巨石、石造物、地形が数多く存在する。


これらから想起される物語は、「国生みの島・淡路」に限らない。日ユ同祖論に基づくイスラエル遺跡、レイラインが交差する場所としての伊弉諾神宮、ガイヤ理論における現時点での中心座標に位置する淡路島など、異なる世界認識を持つ人々が、各々の理論に基づき、淡路島をその物語の中央に据えている。


また、1970年代には淡路島を出身地とする事業家が、観光客誘致を目的とし、80mの世界平和大観音を建立。2008年には大手人材派遣会社が、サブカルチャーを利用した県立公園整備事業や、富裕層を顧客としたキャラクター商業施設、地元の歴史と農産物をプロデュースする廃校再利用型の商業施設を整備するなど、観光に依拠した物語を生む建築物も新たに作られている。


淡路島は、人々の願いを受け、複層化する異なる世界の中心として、物語を生成し続けている。


EBUNEという一つの物語においても、陰謀論者「伊藤佑介」は彼の信じる「オカルトオリンピック」の実在を示す中心として、淡路島に可能性を見出し、儀式を試みる。「伊藤佑介」は、淡路島を儀式の道具と見立て、自身の物語の実現を試みる。彼の欲望の果てに辿り着くものは、はたして誰の願いであるのだろうか。


今回の展示の会場となる、南あわじ西側の海に面した津井という集落は、淡路瓦の産地として知られる。「津井の家 琴屋」は、淡路島にてアートプロジェクトを行うNPO法人淡路島アートセンターが、地元の人から古民家を借り受け、廃屋から整備し、活動の一拠点としている「住まない家」である。人々の交流の場、遊びの場として親しまれている場所だ。


伊藤佑介がオカルトオリンピックの実在を信じ、淡路島へ辿り着くまでの物語は、https://ebune.net/replaynews/​​以降の連載にて公開中である。クルーズ船の異変から始まり、陰謀論者「伊藤佑介」の登場、小豆島でのオカルトオリンピック開会式など荒唐無稽な物語であるが、私たちが現実と格闘し生成した物語である。是非鑑賞いただきたい。


漂着日は2021年10月24日(日)。ご希望の方は2021年10月17日(日)までにebune.drifters@gmail.comに下記の必要情報を明記の上ご連絡下さい。参加者には淡路島漂着ガイドパンフレットを送付いたします。


船長/伊藤允彦・田口薫

荒木佑介

井戸博章

伊藤允彦

KOURYOU

シゲル・マツモト

高橋永二郎

田口薫

福士千裕

三毛あんり

柳生忠平

柳本悠花

山本和幸

湯浅万貴子

メインビジュアル/三毛あんり


協力/淡路島アートセンター

http://awajishima-art-center.jp/

漂着日:2021年10月24日(日)

15時開場、15時半開始(上演時間・約40分)

公演料:3000円

(淡路島漂着ガイドパンフレット付き)

予約〆切日:2021年10月17日(日)

※定員になり次第締め切らせていただきます。


展示公開日:2021年10月25日(月)26日(火)

10時~18時

入場料:500円

淡路島漂着ガイドパンフレット:500円


予約メールアドレス:

ebune.drifters@gmail.com


※お名前、ご住所、電話番号、メールアドレスを明記の上、上記アドレスまでご連絡下さい。淡路島漂着ガイドパンフレットを送付いたします。


会場:津井の家「琴屋」

兵庫県南あわじ市津井1348

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公共交通でのアクセス


↓神戸三宮BT(高速バス約80分)

      

↓陸の港西淡(南あわじ市コミュニティバス「らん・らんバス(せい太くん号)」約50分)

      

↓津井郵便局前(徒歩約4分)

      

津井の家「琴屋」

      

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