船に住み、東アジア一帯で漁業をしながら移動生活をしていた漂海民は、瀬戸内海で「家船」と呼ばれていた。既に消滅したと言われている彼らの歴史は古く、古代から昭和45年頃までその生活が確認されている。


漂海民が日本文化形成に与えた影響を探るリサーチを元に、瀬戸内国際芸術祭2019で展開した作品「家船」は、おとぎ話「桃太郎」の舞台・鬼ヶ島とされている女木島を出航し、独立した作品「EBUNE」として虚実混交の航海を開始した。


生命の方角「東」へ向かうというコンセプトのもと、次の地への漂着準備中に新型コロナウイルスが流行する。海民は外部の文化・技術をもたらすだけでなく、疫病を運ぶ存在でもあった。史実との重なりに驚きながらも、地元の方との対話を重ね、時期を計りながら2020年にウェブサイトhttps://ebune.net/を開設、オンライン上で物語を展開している。


2020年8月に、女木島漂着の前日譚としてKOURYOUの地元である福岡・箱崎での漂着を果たすも、KOURYOUの親族が病に倒れ危篤状態であり非公開で実施された。


今回の佐賀県有田町への漂着は、女木島、福岡のさらに前日譚として、ウェブサイト上での物語と連携した「EBUNE」漂着を公開する第一弾である。


有田町は有田焼の産地として知られる。

豊臣秀吉の朝鮮出兵の際、朝鮮陶工たちを日本に連れて帰り、その中の一人である李参平が泉山磁石場を発見した事から、陶磁器の一大産地となった。まさに外部の者の技術と美意識が発展させた町である。また大量生産には多くの薪が必要なことから、自然破壊との調整に苦心している歴史も、製鉄業、塩業と重なり興味深い。


佐賀県には国の天然記念物である七ッ釜、その半島突端に神功皇后伝説の色濃い土器崎神社、唐津に日本最古の水稲耕作遺跡といわれる菜畑遺跡がある。伊万里では海と山の神輿が激しくぶつかるトンテントン祭があり、古代海民との強い繋がりが窺える。有田は山に囲まれた谷合の町であるが、伊万里湾と大きく長い有田川で繋がっており、この土地にも海民の痕跡があるのではないかと歩いた。


しかし驚いたのは縄文遺跡の多さである。はるか昔、旧石器時代から多くの人々がこの地で生活をしていたようだ。海民と名指すには無理があるものの、この時代の人々もどこかから移動してきた者には変わりないだろう。そして弥生時代になると姿を消している。町の神社には水にまつわる神や恵比寿像も祀られていた。しかし有田の町は文政11年の「皿山大火事」で一度焼失してしまっており、それ以前の史料はほとんど残っていない。


有田町と武雄市にまたがる黒髪山には、山に住む盗賊がモチーフであると思しき大蛇伝説が残っている。彼らはおそらく昔からこの土地に暮らしていた民だと思われるが、ここでは彼らの方が外部とみなされている。

この地での外部の者とは、一体誰なのだろうか。


現在有田には多くの焼き物ミュージアムがあり、町全体が観光地化されている。県が取り組むプロジェクトでは「テーマパーク有田」「ARITA」の文字が並ぶ。豊かな自然と陶磁器に彩られた街並みで、時間の手触りのようなものがなかなか掴めない中で、経年劣化の影響を受けにくい陶磁器の鮮やかな青が、さらに私たちの時間感覚を撹乱する。


美しい山中の風景と、美しい色を見つめる自分自身の連関から抜け出す方法はあるのだろうか。


漂着の会場は、画家・岩永忠すけが支配人を務める、複合型リゾートオアシス「Genius Loci」。営業中の「Ammonite Hotel(アンモナイトホテル)」と、準備中である岩永自身の美術館「abyss」、ショップ「EMERALD」からなる複合施設で、建築・空間設計から配色、家具、料理に至るまで画家自身が手掛け、長年にわたり試行/思考を続けている壮大な生成中の作品である。


独立して表現が営まれている場所であり、本来外部の者が展示利用出来るような場所ではないのだが、1日限定で準備中の「EMERALD」に漂着予定である。また、当日の「Ammonite Hotel(アンモナイトホテル)」への宿泊も3組限定で予約を受け付ける


有田漂着までの物語はhttps://ebune.net/replaysaga1/にて、5月6日から3日連続で公開予定であるので是非読んでいただきたい。


漂着日は2021年5月15日(土)。参加は完全予約制で実施する。ご希望の方は2021年5月9日(日)までにebune.drifters@gmail.comに下記の必要情報を明記の上ご連絡いただきたい。当日必要な秘密の情報を返送いたします。


船長/KOURYOU

荒木佑介

犬おわり

伊藤允彦

KOURYOU

シゲル・マツモト

平間貴大

三毛あんり

柳本悠花

山本和幸

湯浅万貴子

メインビジュアル/田口薫

漂着日:2021年5月15日(土)※完全予約制


予約〆切日:2021年5月9日(土)

※定員になり次第締め切らせていただきます

予約メールアドレス:

ebune.drifters@gmail.com


※お名前、ご住所、電話番号、メールアドレス、Ammonite Hotelへの宿泊又はホテル内レストランでの夕食ご希望の有無を明記の上、上記アドレスまでご連絡下さい。

当日のご参加に必要な情報を返送いたします。


※Ammonite Hotelへのご宿泊は限定3組の先着順です。コース内容は下記サイトをご参考下さい。

楽天トラベル・Ammonite Hotel


公演料:5000円

(屋外公演・作品観覧/有田漂着限定グッズ付き)


GENIUS LOCI(ゲニウス・ロキ)

佐賀県西松浦郡有田町下内野丙2409-1

https://geniusloci.site/

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